エネルギー関連マーケットの現状

日本語は英語の後に続きます。
5 minute read | November.05.2025

English: Japan Renewables Alert 71

弊所東京オフィスは、1997年の開設以来、海外の再エネ事業への投資や開発に携わる事業者様をサポートし、かつ、2012年のFIT制度導入以降には、国内における再エネ事業の開発等に携わる国内外の事業者様もサポートしてきました。ポストFITの時代に移行する中、オンサイトPPAのアレンジ、非FITのコーポレートPPA案件の組成、蓄電池案件の開発やトーリング、大規模データセンターの開発、水素発電事業や電力トレーディングなど、その活動領域を広げております。また、弊所では、具体的な案件におけるサポートを通じて皆様のビジネス・ニーズに奉仕することはもちろん、再エネ業界全体を活性化させる活動として、マーケットや法令の動向についてのセミナーの開催やパネルへの登壇、国会議員からの招聘に応じた講演、大学等の教育機関における講義等を通じた人材育成、再エネ分野で活躍する女性などのサポート、日本風力発電協会の監事就任等の業界団体活動などに積極的に携わっております。Japan Renewables Alertでは、通常、再エネ分野についての重要な法令改正をお知らせしていますが、本号では、近時の弊所の活動等の一部をご紹介しつつ、再エネ分野におけるマーケットの現状を概観いたします。

なお、弊所では、再エネ及び蓄電池に関する法令変更や関連する議論などを含む事業者様にとって重要な最新情報をまとめたレポートを月2回有料にてお届けしております。ご関心のある方は、こちらまでご連絡くださいませ。

1. 新パートナーを迎えてエネルギー案件のファイナンス等を一層強化

Akira Takahashi

この度、弊所は、新たなパートナーとして、髙橋啓(第二東京弁護士会)を東京オフィスのエネルギー・アンド・インフラストラクチャー・グループに迎えました(こちら)。

髙橋は、日本及びニューヨーク州において法曹資格を有し、国際的なエネルギー・プロジェクトやプロジェクト・ファイナンスについて、豊富な経験と深い知見を有しております。前職のRWE Renewablesではシニア・リーガル・カウンセルを務め、かつての法律事務所勤務時代には株式会社国際協力銀行(JBIC)に4年間出向し、エネルギー及び天然資源に関する事業に携わりました。

東京オフィスは、皆様の案件開発やファイナンス、対外投資を一層強力にサポートいたします。

2. 洋上風力

2025年10月15日から同月17日にかけて、秋田市でGlobal Offshore Wind Summit Japan(GOWS-J)が開催されました(こちら)。弊所は、GOWS-Jにスポンサーとして参加し、会場にブースを設置して、東京、ロンドン、シンガポールの各オフィスのロイヤーが、来場された皆様と情報交換を行いました。多くの方がブースにお立ち寄りくださいましたことを感謝申し上げます。

大ホールで開催されたセッションにおいては、ロンドンオフィスのアダム・スミスが、洋上風力事業におけるコーポレートPPAに関してパネリストとして登壇し、ヨーロッパ市場の動向や知見についてお話ししたほか、若林美奈子(東京弁護士会)をはじめ東京オフィス及びシンガポールオフィスのロイヤーからAPACのマーケットの現状と弊所の取組みをご紹介いたしました。

2025年8月に第1ラウンド3海域の選定事業者の撤退が公表されたことは、日本の洋上風力業界において少なからぬ衝撃をもって受け止められました。経済産業省では、再エネに関わる様々な事業者や洋上風力発電事業に知見のある有識者から呈されてきた公募制度の設計に対する指摘も踏まえ、公募制度の改革に向けて議論を進めています。2025年10月3日には、秋田県秋田市沖などが「有望区域」に、千葉県旭市沖が「準備区域」として整理されるなど、将来における更なる促進区域の指定に向けた動きも見られます(こちら)。環境施策及び産業施策の両面から洋上風力を適切に推進することが喫緊の課題であることに変わりはなく、洋上風力公募制度の今後に注目が集まっています。

Orrick lawyers at the Global Offshore Wind Summit Japan (GOWS-J)

GOWS-Jにて:左から、河村豪俊、福田直之、髙橋啓、若林美奈子、アダム・スミス、アンドリュー・ヒューズ、小路健太郎、カーシック・クマール、マイケル・ターディフおよびアダム・モンクリフ

3. 対米エネルギー投資

2025年10月3日、弊所は、一般財団法人海外投融資情報財団(JOI)及びMarathon Capitalとともに、「米国パワーシフト:エネルギー政策、ガス市場、再生可能エネルギー、データセンター需要の急増」と題したセミナーを開催しました(こちら)。

弊所からは、東京オフィスの若林美奈子(東京弁護士会)及びアンドリュー・ヒューズ(ニューヨーク州弁護士)が登壇し、マーケットをリードする他のパネリストとともに、「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法(One Big Beautiful Bill Act:OBBBA)」の影響をはじめ、プロジェクト・ファイナンスの現状や今後の動向予測、米国を中心とした電力市場への投資に影響を与える最近の規制や市場動向についてお話ししました。

弊所は、米国を拠点に、全世界的にサービスを提供しております(こちらを参照)。日本から米国等へのアウトバウンドの投資についてもサポートしておりますので、お気軽にお問合せください。

4. 工事関連契約・PPAを含む再エネ開発の包括的サポート

弊所東京オフィスの小路健太郎(第一東京弁護士会)は、2025年4月から7月にわたり、武蔵野大学大学院法学研究科において、客員准教授として再エネ関連法務に関する講義を行いました。講義は、再エネの土地取得、許認可、工事、PPA及びファイナンスなどその全フェーズに関する網羅的な内容であり、弊所がこれまでの経験で培ってきた法的な理論と実務的な知見を活用したものとなりました。

小路は、再エネ案件開発のあらゆる場面に携わってきており、特に工事関連契約について深い知見を有する日本のマーケットでは希少な弁護士です。弊所では、ファイナンスや許認可のデュー・ディリジェンスはもちろん、コーポレートPPAや工事関連契約などプロジェクトに必要な様々な契約について、実務の経験に基づくサポートが可能です。

5. 蓄電池トーリング及び再エネ併設蓄電池

2025年9月24日、Akaysha Energyが主催する大規模蓄電池と革新的なトーリングのアレンジメントに関するイベントにおいて、弊所東京オフィスの河村豪俊(東京弁護士会)がパネリストとして登壇いたしました(こちら)。

系統用蓄電池については、実態を後追いする形で2023年4月に系統用蓄電池を想定した電気事業法の改正が施行され、現在では、変動性再エネの増加に伴う社会的ニーズの増大も背景に、2025年6月末時点で接続検討段階143GW、連系契約申込段階18GWに及ぶ旺盛な開発が行われています(こちらを参照)。こうした中、プロジェクト・ファイナンスによる資金調達も見据え、大規模蓄電池の長期トーリング契約に関する注目が集まっています。蓄電池のトーリング契約は、蓄電池のデベロッパーないし保有者がその運用(充放電、各種市場参加)をオフテイカーに委託する契約であり、弊所は、米国においてプラクティスを確立しマーケットを牽引しているほか、日本でもご相談を頂いております。

加えて、近時は、米国などのマーケットと同様、日本でも再エネ発電所に蓄電池を併設するモデルに対する関心も高まっており、弊所でも多くのお問合せを受けています。経済産業省も、全FIT/FIP案件におけるFIP比率を25%にすることを当面の目標として、主として太陽光を念頭にFIT案件をFIPに転換した上で蓄電池を併設する事業者(FIP転換+蓄電池併設)を後押しするための法令改正や運用の整理を行っています。たとえば、FIP転換+蓄電池併設のためには、FIP転換のための手続と蓄電池を追加するためのFIP変更認定申請が必要となるところ、2025年8月には、手続の円滑化の観点から必要な再エネ特措法上の手続の運用を改善した上で公表しています(こちら)。

もっとも、既に保有するFIT案件のFIP転換ではなく、第三者からFIT案件を取得する場合には、当該案件取得(事業譲渡又はSPC持分譲渡)について譲渡後に変更認定を受ける必要があるところ、(1)当該変更認定申請に当たり原則として再エネ特措法に基づく住民説明会の開催が必要とされているほか、(2)事業譲渡によりFIT/FIP認定事業者が変わる場合などには設備設置場所の土地権原の確保状況について改めて審査されることがあります。説明会に関しては、(1)法令及びガイドラインから必ずしも明らかでない基準に対する形式的かつ軽微な齟齬を理由にやり直しが指示される事例が相次いでいるほか(Japan Renewables Alert 70をご参照ください。)、(2)設備設置場所に関しては、法令改正のないままパブリックコメントも経ずに事前予告のない実質的な審査基準の変更が繰り返されてきたところであり、過去の基準の下で認定が取得されていても、現行の基準ないしは非公表の新たな基準への不適合を理由に補正指示がされる可能性がありますので、こうした点にも留意する必要があります。

6. データセンター

近年、生成AIの拡大等を背景にデータセンターの建設ないし電力供給に関する取組みが盛り上がりを見せています。弊所は、米国におけるデータセンター開発関連分野を牽引しており、2025年5月にはデータセンターに関するパネルセッションを開催したほか(こちら)、同年7月には米国での実績を中心にデータセンターに関するガイドブック(英文)を発行しております(こちら)。

このガイドブックは、前記の「米国パワーシフト」のセミナーにおいでいただいた方や、GOWS-Jの弊所ブースにお越しいただいた方には、暫定和訳版とともに無料でお配りしております。Japan Renewables Alertをご購読いただいている事業者様にもご提供させていただきますので、ご関心がある方はぜひこちらまでご連絡くださいませ。

弊所では隔週でのRegulatory Update Report(有料、日英併記対応可)の配信も行っておりますので、ご関心がありましたら、お気軽にお問合せくださいませ。