Japan Renewables Alert 69


6 minute read | February.04.2025

EnglishOutlook for Japan’s VREs and Storage in 2025

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日本の太陽光・風力・蓄電池、2025年の展望

日本のエネルギー市場は、コーポレートPPAの案件組成が進むとともに、多くの蓄電池案件の開発が進められるなど、大きな盛り上がりを見せています。こうした中、2025年には、様々な制度改正ないしその議論が予定されています。本稿では、その主要なものを概観し、本年のエネルギー市場の動向を展望します。

1. 洋上風力発電、公募制度の改定とEEZへの拡大

洋上風力では、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法律第89号。以下「再エネ海域利用法」)に基づく公募制度におけるルールが見直されます。海外では様々な開発リスク要因から洋上風力発電事業の中止・撤退が相次ぐ中、今後予定される上記ルール変更は、洋上風力発電事業が完遂されるよう確保することを主眼とするものです。具体的には、(i) 適用FIT/FIP価格について物価による調整を行う「価格調整スキーム」の導入、(ii) 十分な公的支援を期待できない価格水準での入札を事実上強いることとなりかねない「ゼロプレミアム水準」等の価格点に関する見直し、(iii) 落札事業者が支払うべき保証金の増額を含む保証金制度の見直し、などが検討されています。新たなルールは、第4ラウンド以降適用されることが予定されています。

また、広大な排他的経済水域(EEZ)の活用に期待が集まるところ、政府は、EEZにおいて洋上風力発電を行えるよう、再エネ海域利用法を改正する法案を再度国会に提出する予定です。同旨の法案は、2024年に国会に提出されていましたが、衆議院の解散に伴って廃案となっていました。

2. 蓄電池、早期連系へ系統ルールを整備

経済産業省及びOCCTOでは、系統用蓄電池の早期接続を実現するためのルール変更を検討しています。

現行のルールでは、蓄電池への充電(順潮流)について、系統混雑が生じる可能性がある場合には原則として系統増強なく接続することはできないものとされています。長期脱炭素電源オークションや経済産業省の補助金を背景に系統用蓄電池の接続検討受付が増加する中、早期の接続を実現するため、順潮流側での混雑が生じ得る場合でも、需要が高い時間帯における充電制限の同意を前提に系統増強をせずに系統接続を許容することが検討されています。新たなルールは、早ければ2025年4月に開始される見込みです。

3. 太陽光・風力の解体及びリサイクル

太陽光発電に関しては、発電設備のリサイクル制度の導入が議論されています。経済産業省と環境省は、有識者会議を開催して、非 FIT・非 FIP 設備を含めた太陽光発電設備の解体・リサイクルについて責任の所在や費用負担を検討しています。2024年12月16日には、上記有識者会議の議論の取りまとめ案が公表され(こちら)、2025年1月16日まで意見募集手続に付されていました(こちら)。

上記取りまとめ案では、製造業者に再資源化費用の負担を求めるべきとする一方、その前段階となる設備の解体等の費用については、設備所有者が負担することが適当であるとしています。そして、設備所有者は、原則として、当該設備の使用開始前までに、解体等費用を第三者機関へ預託する制度を導入すべきであるとしています(10頁)。既に再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(平成23年法律第108号。以下「再エネ特措法」)による廃棄等費用積立制度の対象となっているFIT/FIP認定設備については、新たな制度による預託は求めないとしていますが、非FIT・非FIPの太陽光案件には、今後、新たな制度による預託が求められる可能性があります。

このほか、上記取りまとめ案では、FIT/FIP風力発電設備(再エネ海域利用法に基づく洋上風力を除く。)について、今後は「原則として……廃棄等費用積立制度の対象とすることが適当」であるとしています(14頁)。今後、風力発電設備も、再エネ特措法に基づく廃棄等費用積立制度の対象とする検討がされる可能性があり、留意が必要です。

4. FIP制度及びコーポレートPPA、活用拡大に向けた促進策

経済産業省は、既存のFIT電源のFIPへの移行(FIP転換)を促し、FIT/FIP電源の25%をFIP電源に移行させることを当面の目標としており(なお、2024年3月現在でFIT/FIP認定取得容量のうちFIPは約1.7%)、それまでの間、FIP転換を後押しする施策を取る方針を示しています。

そのための方策の1つとして、出力抑制(需給制約)の順序に関し、FIT電源を非FIT電源(FIP電源を含む。)に先立って抑制するよう系統利用ルールを変更する方針です。また、これによりFIT交付金の総額は減少することが見込まれます。これを受け、経済産業省では、FIP交付金の算定に当たって用いられるバランシングコスト相当額を一定の限度で時限的に引き上げることで、早期にFIP転換をした電源がより多くのFIP交付金を受け取ることができるようにする方針です。

また、FIP転換した電源への蓄電池の併設を促進するための再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則(平成24年経済産業省令第46号。以下「再エネ特措法施行規則」)の改正もされます。すなわち、現行のルールでは2024年度以降に新規認定を受けたFIP電源のみが、併設蓄電池への系統からの充電が可能とされていますが、2025年4月1日以降は、2023年度以前に新規認定を受けたFIP電源(FITからFIPに移行した電源を含む。)についても、系統から併設蓄電池への充電が可能となります。

さらに、経済産業省では、非化石証書の制度を変更し、FIP電源のうち、バーチャルPPAのスキームの対象となる範囲を拡大する方針です。送配電網を通じて供給される電気について発行される環境価値証書である非化石証書は、一定の場合に限り、発電事業者(又は特定卸供給事業者)から法人需要家への直接移転が可能とされており、こうした直接移転のスキームは非FIT再エネ発電プロジェクトのバーチャルPPA組成に活用されています。現行の非化石証書のルールでは、FIP電源に由来する非FIT非化石証書(再エネ指定あり)の直接移転は、2022年4月以降に運転を開始した発電所についてしか認められていませんが、経済産業省は、それ以前に運転を開始しているFIP電源(FITからFIPに移行した電源)についても、こうした直接移転のスキームを認めるよう制度改正を検討しています。

5. 青森県で再エネのゾーニングと課税を定める条例導入へ

2024年には、宮城県において、森林区域の開発行為により設置された再エネ発電設備(太陽光、風力又はバイオマス)の所有者に課税する「再生可能エネルギー地域共生促進税条例」が施行、再エネに特化して課税する初の条例として大きな注目を集めました。

再エネ事業と地域との共生をテーマとした類似の動きは他県でも見られます。青森県では、再エネ事業に関するゾーニング及び地域との合意形成プロセスを定める「青森県自然・地域と再生可能エネルギーとの共生条例」(骨子案はこちら)並びに再エネ事業に対する新税(再エネ共生税)を定める「青森県再生可能エネルギー共生税条例」(骨子案はこちら)について議論されています。

これらの条例の対象となるのは、2,000kW以上の太陽光案件と500kW以上の陸上風力案件です。ゾーニングに関しては、県内を調整地域、保全地域、保護地域に区分し、知事は調整地域及び保全地域のうち再エネとの共生が可能と認めた地域を「共生地域」に指定できるとしています。その上で、保護地域では原則として事業実施は禁止され、その他の地域での事業実施に関しては地域との合意形成プロセスを定めています。再エネ共生税は、共生地域に設置される発電設備及び建築物の屋根に設置する太陽光発電設備には課さない一方、太陽光では調整地域で110円/kW、保全地域及び保護地域で410円/kW、陸上風力では調整地域で300円/kW、保全地域及び保護地域で1,990円/kWの税を課すこととされています。

青森県は、今月の定例会に条例案を提案する方針です。

6. 2025年の展望

2025年は再エネ業界にとって多くのチャンスがある一方で、多くの制度改正ないしその議論が予定されており、これらを正確に把握することが求められます。弊所では、国内外での豊富な経験をもとに事業者の皆様の案件をサポートさせていただくとともに、隔週で法令改正に関する最新情報をお届けするサービスも提供しておりますので、お気軽にご相談ください。

最後になりますが、弊所東京オフィスのエネルギー・アンド・インフラストラクチャ・チーム所属の、Andrew Hughesが新たにパートナーに就任するとともに、河村豪俊がオブ・カウンセルに就任いたしましたことをご報告申し上げます。より強力なチーム体制にて、本年も、あらゆる面で皆様をサポートさせていただければと存じます。