Japan Renewable Alert 54

Energy & Infrastructure Alert | April.27.2021

洋上風力、系統確保の新スキーム導入へ

English: Offshore Wind: Introduction of a New Scheme for Interconnection

一般海域における洋上風力発電に関しては、2019年4月1日に施行された海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法律第89号。以下「再エネ海域利用法」)により、国(経済産業大臣及び国土交通大臣)が指定した促進区域において、国の実施する公募制度を通じて選定された事業者が事業を行うこととされています。既に複数の促進区域が指定されているほか、促進区域の候補地として「既に一定の準備段階に進んでいる区域」も10区域が公表され、更にこの10区域のうち4区域については「有望な区域」(以下「有望区域」。「既に一定の準備段階に進んでいる区域」のうち有望区域以外のものを、以下「準備区域」といいます。)とされています(下記地図参照)。再エネ海域利用法の下で洋上風力の導入が推進される中、海域の占用公募制度における大きな課題の1つとされていた系統確保に関する仕組みが大きく改善される可能性があります。

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出典:経済産業省資源エネルギー庁、国土交通省港湾局「再エネ海域利用法の運用状況を踏まえた検討事項」(2021年2月17日 審議会資料)4頁

経済産業大臣及び国土交通大臣が促進区域を指定するに当たっては、再エネ海域利用法上、系統との連系が「適切に確保されることが見込まれること」(再エネ海域利用法8条1項4号)が要求されています。促進区域の運用について定める現行の「海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域指定ガイドライン」(2019年6月11日公表。以下「促進区域指定ガイドライン」)では、この要件に関し、事業者が系統容量を確保しており、かつ、これを公募のために提供する意思(自らが落札できなかった場合には落札した事業者に当該系統容量を承継させることとなります。)を表明していることが求められています。このような制度については、その確保している系統容量の規模によって左右されて適切な規模での促進区域指定を行えない、複数の風力事業者が同じ区域に重複して系統容量を確保することで必要以上の系統容量が確保されてしまう、といった課題があると指摘されていました。

こうした課題を解消すべく、効率的な系統利用の観点から、促進区域の指定に際して、国からの要請により暫定的な系統容量を確保する仕組みが、経済産業省の審議会及び経済産業省・国土交通省共同の審議会で整理されました。 具体的には、有望区域の指定に先立って行われる自治体及び事業者からの情報収集の結果、系統が確保されていないものの、促進区域指定を行う見込みが一定程度ある場合には、国は、系統を運用する一般送配電事業者に対して照会することなどにより接続の蓋然性やその費用について調査し、促進区域の指定に先立って、電力広域的運営推進機関(OCCTO)に対する国の要請に基づいて、一般送配電事業者が暫定的に系統容量を確保することが検討されています(下図参照)。また、この場合において、当該容量を確保するために系統の増強が必要となる場合には、一括検討プロセス(近隣の案件も含めた対策を立案し、系統連系希望者で増強工事費を共同負担するプロセス)と公募が同時並行的に実施できるような制度とする方針が示されています。

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出典:経済産業省資源エネルギー庁、国土交通省港湾局「再エネ海域利用法の運用状況を踏まえた検討事項」(2021年2月17日 審議会資料)43頁

現在、経済産業省及び国土交通省では、2021年4月2日、上記整理を踏まえた促進区域指定ガイドラインの改正案を公表し、これについて2021年5月1日まで意見募集(パブリック・コメント)手続が実施されています(こちらを参照)。具体的には、前記再エネ海域利用法8条1項4号の要件充足性の判断に当たり、事業者によって系統の確保及び提供が見込まれる場合だけでなく、国の要請に基づいて一般送配電事業者により系統が確保されている場合も、系統への連系が「適切に確保されることが見込まれること」に該当し得ると位置づけるなどの改正が盛り込まれています。

また、OCCTOでは、上記整理に従って、業務規程及び送配電等業務指針の改定作業中です。OCCTOが国からの要請を受領した場合には一般送配電事業者に容量確保及び接続検討をするよう通知すること、一般送配電事業者は当該通知を受けて暫定的な容量確保と接続検討を実施してOCCTOに回答すること、OCCTOが国に対して当該検討結果を回答することなどが盛り込まれる方向性が示されています(こちらを参照)。

現時点で指定されている促進区域については、既に事業者が確保した系統を活用することを前提として公募が行われています。上記の国による系統確保スキームは、今後、事業者による系統確保がされていない区域における系統確保に活用されることが考えられ、経済産業省及び国土交通省では、今後、関連するルールの整備を行い、具体的な適用開始については改めて周知するとしています。

経済産業省及び国土交通省は、洋上風力のポテンシャルが高い東北地方(促進区域、有望区域、準備区域がいずれも複数指定されています。)において、既に多くの洋上風力案件が、東北北部地域を対象とした系統接続案件募集プロセス(以下「東北募プロ」)を通じて系統容量を確保していることを踏まえ、東北募プロを通じて確保された系統容量について提供意思が表明された促進区域では、まずはこの系統容量を活用することとしています。もっとも、その上で、追加的に系統容量を確保する必要がある場合には、上記の国による系統確保スキームの活用やノンファーム型接続(Japan Renewable Alert 53の3を参照)による系統容量の追加確保を検討するとの方針が示されています。

上記の国による系統確保スキームにも課題はあるものの、国内に置ける洋上風力の導入拡大にとって大きな前進といえます。事業者にとっては、今後の系統容量確保の方針等を含めた洋上風力発電事業における判断に大きく影響すると考えられますことから、議論の進捗を注視するとともに、適切な運用がなされるよう引き続き必要な働きかけを行っていく必要があります。