Japan Renewable Alert 44: 再エネ関連法制、抜本的な改正へ

Energy & Infrastructure Alert | March.10.2020

English: Comprehensive Revamp of Regulations on Renewables

1. 再エネ関連法制の動向

電気事業法(昭和39年法律第170号)及び電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号。いわゆるFIT法。以下「再エネ特措法」という。)等を改正する「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」の案(以下、単に「法律案」という。)が2020年2月25日付けで閣議決定され、同日、国会に提出されました(こちらを参照)。法律案は、再エネ特措法の抜本的な見直しを含み、今後の我が国における再エネの行末を左右するものであって、再エネ業界にとって極めて重要なものです。新法は、可決されれば、一部の例外を除き、2022年4月1日施行予定です。

2020年2月25日には、上記法律案の基となる議論がされていた再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会(以下「主力化小委」という。)及び持続可能な電力システム構築小委員会(以下「構築小委」という。)の各中間取りまとめの最終版と、これらの案についてのパブリックコメントに対する回答も公表されています(主力化小委についてこちらを、構築小委についてこちらをそれぞれ参照)。

さらに、こうした改正に向けた動きが加速する中、法改正に先立ち、審議会における議論の一部を2020年度以降のFIT制度の運営に反映させるための事業計画策定ガイドラインの改正案が、2020年2月17日に公表され、同年3月17日までのパブリックコメントに付されています(こちらを参照)。

本Alert Letterでは、こうした再エネ関連規制の大きな変動及び注意点等についてご紹介します。

2. 法律案の概要

法律案で予定されている改正のうち、重要なものは以下のとおりです。

(1) FIP制度の導入

法律案は、再エネ特措法の第2章に、第1節として「市場取引等による再生可能エネルギーの供給」という節を新設し、いわゆるFIP制度について規定します。「市場取引等」として、卸電力取引市場における売買取引や小売電気事業者への卸取引が想定されており(新再エネ特措法2条の2第1項)、一定の再エネ電源について市場統合が意図されています。FIP制度の対象となる発電設備の区分等(区分、設置の形態及び規模)は、「交付対象区分等」と呼ばれ、経産大臣が調達価格等算定委員会の意見を尊重して定めることとされています(2条の2第1項、4項)。交付対象区分等の発電設備についての認定事業者は、市場取引等を通じた売電収入に加え、「交付期間」にわたり「供給促進交付金」というプレミアムの交付を受けられます(同条第2項)。

他方、一般送配電事業者等が固定価格で買い取ることが適当と認められる区分等(「特定調達対象区分等」)に該当する発電設備は、引続きFIT制度の対象とされます(3条1項)。特定調達対象区分等についても、経産大臣が、調達価格等算定委員会の意見を尊重して定めます(同項、同条8項)。

いずれの制度においても、入札制の対象とする電源については、経産大臣が調達価格等算定委員会の意見を尊重して定めます(4条1項、2項)。

これまでの議論を踏まえると、FIP制度の対象となる電源については、メガ・ソーラーや風力(陸上・洋上)が念頭に置かれているものの、具体的な区分や規模は状況を見つつ定めることとされている上、入札対象となる区分や規模についても今後の検討に委ねられています(主力化小委中間取りまとめ4頁)。また、FIP制度上のプレミアムは、経産大臣が定める基準価格から、市場価格を基に算出されるいわゆる参照価格を引いた値を単価(円/kWh)とし、これを踏まえて算定されますが、省令で示されるべき参照価格の算定方法についても、今後の議論に委ねられています。これらの点について、引続き今後の議論を注意深く追っていくことが必要です。

(2) 解体等の費用の積立て

発電設備の廃棄等費用の積立て制度に関する法律案の規定は、2019年12月10日の太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ(以下「廃棄等費用WG」という。)の中間整理(こちらを参照。また、Japan Renewable Alert Letter 43を参照)に沿ったものです。

発電設備の解体及び解体により生じる廃棄物の処理(「解体等」)に要する費用を「解体等積立金」として積み立てることが義務付けられる区分等は、経産大臣によって指定されます(新再エネ特措法15条の6第1項、2項)。このカテゴリーは、「積立対象区分等」と呼ばれ、これまでの議論からすると、10kW以上の全ての太陽光が積立対象区分等として指定され、既稼働か否かを問わず積立て義務が課されるものと見込まれます。

解体等の費用については、源泉徴収的にOCCTOに積み立てられる(いわゆる外部積立)のが原則ですが(15条の6第3項、4項、15条の8)、事業者は、認定申請に当たり、解体等の費用に充てるための積立ての額及び方法その他一定の事項を記載した事業計画を提出することができ、一定の基準を満たせば、当該計画に従った積立て(いわゆる内部積立)が可能とされています(9条3項、同条4項7号、15条の11)。こうした記載事項や基準については、今後経産省令で定められる予定です。廃棄等費用WGでのこれまでの内部積立の要件に関する議論が参考にされると考えられますが、内部積立を希望する事業者にとっては重要なポイントになりますので、引続き今後の議論を注意深く追っていくことが必要です。

いずれの方法でも、定められたとおりに積立てがされない場合には、認定取消事由となります(15条4号)。

(3) 長期未稼働案件の認定失効

認定から長期間を経ても運転開始に至らない電源のために系統連系枠が確保されていることが新規案件の参加を阻害しているとの認識の下(主力化小委中間取りまとめ21頁)、系統の有効活用を推進するため、認定後一定期間内に運転開始に至らないものについては、認定が当然に失効することとされます(新再エネ特措法14条2号)。具体的な期間や経過的な措置については、主力化小委中間取りまとめの議論を踏まえて、今後検討されることとなりますが、不合理な認定失効等が行われることがないよう、引続き今後の議論を注意深く追っていくことが必要です。

3. 事業計画策定ガイドライン

前記1.のとおり、事業計画策定ガイドラインの改正案が、2020年3月17日までのパブリックコメントに付されています。このうち、太陽光の事業計画策定ガイドラインでは、廃棄等費用WGでの議論を踏まえ、出力 10kW 以上の太陽光発電設備について、災害等による発電事業途中での修繕や撤去及び処分に備え、火災保険や地震保険等に加入するよう努めることが新たに盛り込まれました。

主力化小委中間取りまとめ(15頁)や同取りまとめ案に対するパブリックコメントの回答(Q169)では、今後、遵守義務化も検討することとされているとされており、今後の議論に注意が必要です。

4. 今後の展望

今回明らかとなった法律案による改正は、広範な事項に及び、その影響も甚大です。しかるに、今回公表された法律案自体は制度改正の大枠を定めるにとどまり、詳細については上記のとおり未だ不透明なままであり、かつ、今後いつまでにどの程度具体化されるのかも定かではありません。さらに、経産省の審議会での議論のうち、法律の改正を要しない事項については着々と実施に移されています。

再エネ関連法制が大きな変動期にある中、その動向を常に正確に把握し、必要に応じて政府等への適切な働きかけを行うと共に、自らの事業や案件への影響を精査し、最善の対応策を講じていくことが事業運営上不可欠です。