Japan Renewable Alert 43: 太陽光発電設備廃棄等費用の積立て制度の導入

Energy & Infrastructure Alert
December.20.2019

English: Introduction of Mandatory Reserve for Cost of Decommissioning PV Facilities

20227月までに開始が予定されている太陽光発電設備の廃棄等費用の積立て制度について、経済産業省の審議会で議論がされてきましたが、1210日、この議論をまとめた中間整理が発表され、制度の詳細が明らかになってきました。

1 廃棄等費用の積立て制度の背景

太陽光発電設備の廃棄処理に対する世論の関心の高まりを受け、経済産業省は、20184月に「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」を改訂してその廃棄等費用の積立てを求めるとともに、20187月には積立計画と進捗状況を定期報告における報告事項としました。しかし、その後も廃棄等費用を積み立てていない事業者が一定程度あるとの認識の下、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会での議論を経て、本年4月から、太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ(以下「廃棄等費用WG」という。)を創設して、廃棄等費用の積立て制度について検討してきました。

1126日には廃棄等費用WGの議論を集約した中間整理案が公表され、同日の議論を経て1210日に正式な中間整理が公表されて、制度の詳細が明らかになってきました。

参考: 中間整理

2 積立て制度の概要

太陽光発電設備の廃棄等費用の積立て制度は、稼働・未稼働を問わず、10kW以上の全ての固定価格買取制度に基づく電力買取がなされる太陽光発電案件を対象とします。原則として外部積立(売電収入から源泉徴収的に第三者機関が積み立てる方式)が義務付けられ、一定の要件を満たす場合に限り、内部積立(事業者自身において積み立てる方式)を許容することとされています。

外部積立においては、FIT期間の後半10年間、毎月、kWh単価に売電量を乗じた金額を積み立てることが求められます。外部積立では、調達期間中は、事業を廃止・縮小しない限り積立金の引出しは原則として認められず、調達期間終了後の太陽光パネルの処分に際して積立額を取り戻すことができるにとどまります。

他方、内部積立においては、kW単価に認定容量を乗じた金額が最終的に積み上がるような水準で積み立てることが求められ、かつ、後半10年間については、毎年、この額を10年間で均等に分割して積み立てたとしたら当該時点で積み立ておくべき額以上の額を積み立てておくことが求められます。内部積立の場合には、パネルの修繕等のための一時的な引出しは許容されますが、原則として1年以内に積み戻すことが求められます。

上記各単価について、2019年度までに認定された非入札案件では、各調達価格に応じて、その調達価格の算定において想定されていた廃棄等費用の額(外部積立の場合には、更に設備利用率)を基準として定められます。たとえば、調達価格が40円の案件については、外部積立におけるkWh単価は1.62/kWhという値が、内部積立におけるkW単価は1.7万円/kWという値が示されていますので、外部積立の場合には、調達期間の後半10年間については、上記kWh単価に毎月の売電量を乗じた金額が売電収入から源泉徴収的に差し引かれて積み立てられることとなりますし、内部積立の場合には、たとえば20MWの案件であれば、上記kW単価に20,000を乗じた約34000万円が調達期間終了時に積み立てられているように計画を立てる必要があります。

どのような場合に内部積立が許容されるかという要件については、中間整理の23から29ページまでにまとめられています。これによると、いわゆるプロジェクト・ファイナンスによるメガ・ソーラー案件については、一定の要件を満たすことでローン返済中は内部積立が可能と思われます。しかし、この場合であっても、金融機関の監督が及ばなくなるローン返済後は、外部積立に移行することが求められます。

中間整理では、以上に加えて、入札案件の積立額の考え方及び具体的金額が示されているほか、2020年度以降の認定案件に関しては調達価格等算定委員会において決定することとされています。また、FIT制度終了後に導入が検討されるFIP制度下でも同様の原則に基づき、廃棄等費用の積立てを求める方向性も示されています。

3 今後の展望

廃棄等費用WGでの議論は、調達価格等算定委員会をはじめとする他の審議会にも報告され、これを前提に議論が深められるとともに、必要な法令改正については、2020年度末までに予定されているFIT制度の抜本見直しの中で具体化される予定です。中間整理によると、遅くとも20227月までに制度開始の予定です。

政府は我が国における再生可能エネルギーの導入促進という方針を繰り返し表明しておりますが、昨年の未稼働案件に対する新ルールの導入を始め(Renewable Alert Letter 38参照)、今回お届けした廃棄等費用の積立て制度や発電側基本料金の導入(Renewable Alert Letter 42参照)、メガ・ソーラーの建設に当たっての法アセスの導入(Renewable Alert Letter 39, 41参照)、その他の自治体レベルの規制など、事業者にとって厳しい法令・制度の改正が続いております。事業者としては、これら改正動向を正しく把握するとともに、適切かつ効果的にその声を政府に届けることが必要です。