Japan Renewable Alert 39: メガソーラー: 40MW以上は環境影響評価の対象に

Energy & Infrastructure Alert | February.05.2019

English: Mega Solar: 40MW and Up Subject to Environmental Impact Assessment Act 

2019年1月15日に太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会(「本検討会」)から「太陽光発電施設等に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書(素案)」(本報告書)が出され、今後、太陽光発電事業については、下記概要のとおり、系統接続段階の発電出力ベース(交流)において40MW以上の事業を環境影響評価法(「法」)における第一種事業とし、一律かつ網羅的に法に基づく環境影響評価(「法アセス」)を課す方針(「本方針」)が示されました。

しかし、本方針では、法の趣旨に合致した環境保全についての適正な配慮が行われないおそれがある上、事業者に不必要な負担を強いることで我が国が目指す太陽光発電事業の価格低減・導入拡大を困難とし、国内の太陽光発電事業、引いては再生可能エネルギー事業全体を萎縮させ、我が国が目標とするエネルギー政策を頓挫させるおそれがあります。

環境省では2019年2月18日まで、本方針についてのパブリックコメントを実施しています。

当事務所では、クライアントや諸関係機関の方々とも協議の上、本方針には種々の懸念点があると考えております。本レターでは、それらの懸念点並びに我々の意見及び要望を記載しております。皆様におかれましても、既にご検討の上、政府等に対して種々の働きかけ等をされていらっしゃることと存じますが、もし未だご意見等されていらっしゃらない場合はご参考にしていただけますと幸いです。

I. 本方針の概要

2018年11月8日付Japan Renewable Alert 37でお伝えしたように、環境省では、一定の太陽光発電事業について法アセスの対象とすることを検討しておりました。その後の検討の結果、本方針では、32MWや36MWではなく、①系統接続段階の発電出力ベース(交流)において40MW以上の事業を法における第一種事業として一律かつ網羅的に法アセスを課すこと、②系統接続段階の発電出力ベース(交流)において30MW以上の事業を法における第二種事業とし、地域特性等を考慮したスクリーニングの結果必要と判定されれば法アセスを課すこととされました。多くの事業者等が求めていた「100ヘクタール」という面積基準は採用されませんでした。

また、本方針では、いかなる開発段階にある太陽光発電事業が対象となるのか、経済産業省が決定した未稼働案件についての新ルールとの整合性がどう採られるのかという点には一切言及がありません。「本方針は2020年夏までに施行される予定で、施行日までに電気事業法上の工事計画届出の受理が行われた案件は適用除外となるらしい」という非公式な情報もありますが、施行時期、適用除外の要件、経過措置の有無や内容等は未だ不明です。

II. 本方針の懸念点並びに意見及び要望

1. 出力要件を採用する不当性について

本報告書では、「太陽光発電事業に係る規模要件の指標については、開発区域の面積(ha)を基準とすることが、環境影響の観点からは望ましいと考えられる」(本報告書8ページ)と自認しつつも、太陽光発電所の出力を要件(「出力要件」)とし、かつ、第一種事業の規模要件の水準とする出力を交流側の出力40MWとする本方針を採用することの主な根拠をいくつか挙げています。しかし、根拠として挙げている内容は、いずれも不適切かつ不合理であり、出力要件とした場合に適正な出力基準を設定することが困難であることからも、出力要件は基準として不当と考えます。(根拠についての詳細な考察はご要望がございましたら別途お送りいたします。)

本報告書でも指摘がありますように、太陽光発電事業においては事業に伴う環境影響が土地造成等の面的開発に係る側面に大きく左右される(本報告書8ページ)のであり、他方、同様の規模の面的開発が実施された場合に、出力の違いにより環境影響の大きさが変わることは想定し難い種類の事業であります。この事実を受け、多くの地方公共団体では、太陽光発電事業自体を条例に基づく環境影響評価の対象としないものの、事業に伴い土地造成等が行われる場合には、その点を条例に基づく環境影響評価の対象として扱っているのが実態です。さらに、既に条例で太陽光発電事業自体を環境影響評価の対象事業に位置づけている地方公共団体においても、そのほとんどが、事業の面積のみで区分し、規定していることからも、法アセス適否に関しては開発区域の面積を基準とすることが環境影響の観点及び法の趣旨から必須であると考えます。

2. 地域特性への配慮について

そもそも太陽光発電事業は、他の発電事業と異なり、モジュール等の発電設備自体の環境への影響は極めて少なく、環境への影響の程度は、上述のとおり、専ら事業を行うにあたって土地造成等が必要となる場合における当該造成等が与える影響の多寡に依拠いたします。これは、上述のとおり、多くの地方公共団体において、太陽光発電事業自体を条例に基づく環境影響評価の対象とせず、事業に伴って行われる土地造成等を条例に基づく環境影響評価の対象としていることにも裏付けられております。

さらに、本報告書でも指摘がありますように、太陽光発電事業導入にあたっては、地域により、環境への影響や地域住民等の苦情等の多寡に大きな差異が認められます(本報告書11ページ)。これは、太陽光発電事業においては、発電設備自体の環境への影響は極めて少ないことから、一般的に、事業に伴って行われる土地造成等が与える環境への影響が少なければ、事業自体の環境影響も少ないと言えるからに外なりません。したがって、事業が行われる場所が、もともと土地造成等によって環境に与える影響が少ない場所である場合には、太陽光発電事業であることのみをもって法アセスの対象とする必要はないと考えられます。

多くの地方公共団体においても、環境影響評価条例で土地造成等を対象とする場合に、地域毎、あるいは一定の地域とそれ以外の地域とで、環境影響評価の対象とする面積を変えております。太陽光発電事業においては、法アセスの対象とするにあたって、何ら地域特性を考慮することなく一律・網羅的に法アセスを適用するのではなく、環境保全への適正な配慮及び太陽光発電事業推進双方の要請を満たすべく、このような地域特性に配慮することが不可欠であると考えます。

事実、本報告書でも、第二種事業について、スクリーニングを行うにあたっての地域特性の考慮に関する基本的な考え方が示されております(本報告書12ページ)が、太陽光発電事業においては、第一種事業においても、同様の配慮が必要です。具体的には、第一種事業においても、第二種事業同様のスクリーニングを行うことが最も望ましいですが、法上これが不可能ということでしたら、これに代わり、第一種事業に該当する場合であっても、特定の場合に、法アセスの適用除外を受けられる制度を設けていただきたく要望いたします。例えば、採石場跡地、最終処分場、工業専用地域、ゴルフ場跡地等、従前の土地利用に比して、太陽光発電設備の設置が環境に与える影響が少ないと認められる地域における太陽光発電事業については、事業者からの申請に基づき、許可を得られた場合には、法アセスの適用除外とし、あとは必要に応じて条例に基づく環境影響評価の対象とすることが必要かつ妥当と考えます。

3. 適正な適用除外事業の設定について

風力発電所の設置工事事業等を法上の新規対象事業等に含めた際には、同法及び電気事業法等を根拠に、該当政令の施行の日(「政令施行日」)前に電気事業法第48条の工事計画届出の受理(「工事計画届出受理」)がされた事業のみ、法第二章から第九章の規定を適用しないこと(「適用除外事業」)とされました。

しかし、今回太陽光発電所の設置工事事業等を法上の新規対象事業等に含めるにあたって、適用除外事業の判断基準として、風力発電所同様に工事計画届出受理を採用された場合、再エネ法との不整合が生じます。

ご承知のとおり、経済産業省は、2018年12月5日に、未稼働案件に対する新たな対応方針(「新ルール」)を決定しました。

新ルールでは、「認定事業者側の準備は全て整っていて、送配電事業者が系統側の事由のみに基づいて最短の連系開始予定日を機械的に決定することができる状態にある」運転開始準備段階に入った時点と判断するための客観的基準として、これまで法令等に規定がなかった「系統連系工事着工申込み」という新たな制度を設け、かかる申込みの電力会社による受領が所定の期限内であった場合には、新ルールに基づく適用調達価格の削減対象から外すこととされております。

すなわち、経済産業省としては、新ルール導入にあたり、運転開始準備段階に入っている案件(「運転開始準備案件」)か否かの新たな判断基準を法令上明確化しようとしたことになります。

かかる基準の明確化・客観化の見地から、新ルールでは、系統連系工事着工申込みを行うために満たすべき要件を厳格に設定し、必要となる許認可については、①農振除外及び農地転用の許可の取得(又は届出の受理)、②条例に基づく環境影響評価の評価書の公告·縦覧の終了及び③林地開発の許可の取得に制限しております。

しかるに、太陽光発電所の設置工事事業等を法上の新規対象事業等に含めるにあたって、適用除外事業の判断基準を工事計画届出受理とした場合、運転開始準備案件の考え方との間で大きな矛盾が生じます。

上記より明らかなように、系統連系工事着工申込みの要件に工事計画届出受理は入っていないため、工事計画届出受理前であっても系統連系工事着工申込みは可能です。したがって、政令施行日前に系統連系工事着工申込みの受領が完了したものの、工事計画届出受理が政令施行日以後となった場合、法アセスが必要となる場合が生じます。かかる案件が、条例に基づく環境影響評価を行っていた場合には、既に評価書の公告·縦覧が終了しているはずですので、法上設けられる経過措置等の内容によっては重大な支障が生じない可能性もあります。しかし、条例に基づく環境影響評価の対象外で、条例に基づく環境影響評価を行っていなかった場合には、政令施行日以後、法アセスを行う必要が生じ、追加で数年という年月を要することになります。その間、運転を開始することは出来ず、運転開始延期に伴い運転開始期限を経過した場合には調達期間が短縮されることになります。

すなわち、法令上、一方では、今まさに運転を開始しようとしている案件であると判断されたにも拘わらず、他の法令に基づいて運転開始が数年単位で遅れることになるものであって、法令間での矛盾が生じ、系統連系工事着工申込みという新たな基準を設けた趣旨を蔑ろにするものであります。

そもそも、新ルール上、一定の運転開始準備案件について新ルールに基づく適用調達価格の削減対象から外すこととされたのは、それらの案件に於ける開発の熟度が十分に高く、ファイナンス関連を含むプロジェクト契約等、適用予定であった調達価格に基づいて近日運転開始となることを前提として締結等され、その後の計画変更が行えない段階に至っていると判断出来る状態であることから、調達価格の変更等により案件を潰すことがないようにという配慮に基づくものであります。かかる判断に当たり、新ルールでは、敢えて工事計画届出受理を要件として入れず、上記の厳格な要件を設定したのであります。しかるに、系統連系工事着工申込みを行った案件が法アセスの対象とされてしまうと、それまで想定していなかった数年の法アセスを行うことになり、予定していた運転開始が大幅に遅れることによりファイナンス契約が解除等されることは必至で、かつ、予定していなかった法アセスに必要な費用、追加の地代、工事中断に伴う諸経費等の負担が課され、調達期間も短縮されるおそれが高く、案件として頓挫することは不可避です。これは、当該案件を運転開始準備案件と判断し、適用される調達価格を維持したまま運転開始を認め、案件として保護しようとした新ルールの趣旨に相反するものであります。

適用除外事業の設定にあたっては、上記を十分に考慮頂き、再エネ法等とも平仄を合わせ、新ルールの趣旨を尊重頂いた上で、開発中・開発済みの太陽光案件に不当な負担を課して運転開始を妨げ、引いては今後の再生可能エネルギー案件の開発を萎縮させることがないよう、十分な配慮を頂きたい次第です。

III. 結論

ご承知のとおり、再生可能エネルギー事業の推進は我が国にとっての急務な課題であります。中でも、太陽光発電事業は、我が国における再生可能エネルギー事業拡大を牽引してきた中核事業であり、政府としては、我が国の風土、文化、技術と調和した形でのさらなる推進に期待し、再エネ法に基づき適用される調達価格の大幅な削減に踏み切ろうとしており、今まさにグリッドパリティが実現し得るが否かの瀬戸際におります。

かかる中、法アセスの時間的・費用的な負担は膨大であることから、真実必要な事業のみを対象とし、実際には不必要である事業に対して一律・網羅的に法アセスを適用させることがないようにすることが必須です。これが確立されない限り、国が目指す太陽光発電事業の価格低減・導入拡大は実現し得ず、太陽光発電事業、引いては再生可能エネルギー事業全体の萎縮は免れず、我が国が目標とするエネルギー政策も頓挫することとなります。