Japan Renewable Alert 42: 発電側基本料金の導入

Energy & Infrastructure Alert | August.07.2019

English: Introduction of Power Producer-side Base Charges

経済産業省では、現在、近く導入されることとなる発電側基本料金の制度設計の詳細について検討が進められています。2019年8月5日開催の有識者会議(再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(以下「大量導入小委」という。)第17回会議)では、この点を含む第3次中間整理案について議論がされました。

1 発電側基本料金の導入

送配電設備の維持・運用等に要する費用については、これまで、主として共通利用が少ない設備に関して発電事業者が負担(「特定負担」)する系統接続時の工事費負担金を除き、基本的には、「一般負担」として電力会社の託送料金に組み込まれ、需要側が負担する仕組みとされていました。しかし、電力需要が減少する一方で分散型電源が増える中、全国規模で系統増強を推し進めるに当たり、託送料金制度を見直すとともに、系統の受益者である発電側と需要側が公平にその費用を分担する制度が求められています。そこで、今後は、発電側も、送配電設備の維持・運用等に要する費用のうちの一定の固定費につき、「発電側基本料金」として継続的な負担をすることとなります(10kW未満の住宅用太陽光を除く。)。

発電側基本料金については、大量導入小委の第1次中間整理(2018年5月)に示されているとおり、2020年以降のできる限り早期に導入すること、電源種を問わず一律にその容量(kW)に応じて課されることが既に決まっています。そして、発電側基本料金が近い将来に導入されることを前提に、2018年6月、再エネ電源の系統接続に際して電力会社が負担する金額(一般負担)の上限額が引き上げられました。

2 問題点及び調整措置についての議論

発電側基本料金は前記のとおり電源種を問わず一律のkW単価で課せられますが、FIT電源については、調達期間中は他にその負担を転嫁できないまま、マイナスのキャッシュフローが継続的に生じ続けることとなります。経産省の審議会では、その額につき1kW当たり月約150円とする試算が例示されていますが、設備利用率の高くない再エネ電源にとってその影響は大きいものです。経産省の算定では、陸上風力発電(設備利用率約26%として算定)では0.8円/kWh、太陽光発電(設備利用率約15%として算定)では1.4円/kWhの負担になるとされております。特に既認定案件については、プロジェクト当初は織り込まれていないキャッシュフロー悪化要因が事後的に追加されることになり、プロジェクトやファイナンスに与える影響は著しいものと思われます。大量導入小委の第1次及び第2次(2019年1月)の各中間整理では、このことを踏まえて、既認定案件と新規認定案件のそれぞれについて調整措置の在り方を検討することとされました。

2019年7月5日開催の大量導入小委(第16回)では、既認定案件のうち、利潤配慮期間に認定を受けた事業用太陽光発電案件(調達価格が29円以上のもの。以下「利潤配慮案件」という。)については、既に高いIRRに基づき算定された調達価格を享受していることから、調整措置は設けるべきではないとの意見が複数の委員から述べられました。こうした議論を踏まえてまとめられた大量導入小委の第3次中間整理案では、既認定案件について、利潤配慮案件を調整措置の対象とするかどうかにつき、賛否両論を挙げつつも、原則として利潤配慮案件以外のものについて「発電側基本料金による追加コストと同水準の調整措置を置くことを検討する」との記載がされました。また、新規認定案件については、調達価格の算定や入札の上限価格の設定においてどのように考慮するかにつき議論が必要とされました。

第3次中間整理案について議論がされた2019年8月5日の大量導入小委においては、この利潤配慮案件についての調整措置の点が、継続的な検討の対象であることを明示する記述を追加するかどうかについて委員の間で意見が割れました。既認定案件については遡及的な変更という側面があるから慎重に進めるべきという意見がある一方、これに批判的な意見も述べられており、予断を許さない状況です。

第3次中間整理は、上記の2019年8月5日の議論を踏まえてまとめられ、公表される予定です。

3 今後の展望

発電側基本料金の調整措置についての議論は、今後、大量導入小委の第3次中間整理を踏まえつつ、調達価格等算定委員会において議論されることとなります。第3次中間整理における記述やその後の調達価格等算定委員会における議論を、引続き注視する必要がありますが、万一、利潤配慮案件を含む既認定案件につき、適切な調整措置が設けられることなく安易に発電側基本料金が適用されるようなことがあれば、実質的には不利益な遡及的制度変更にほかなりません。

2020年度末までに予定されているFIT制度の抜本見直しに向けて、発電側基本料金のほかにも、太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てなど、発電事業者にとって新たな負担となり得る制度改正が検討されています。既認定案件か新規認定案件かを問わず、再エネ関連の各種改正動向を把握し、必要に応じて実務上の声を国に届けていくことは、適切なリスク管理のために一層重要となるものと思われます。