Japan Employment Law Alert: 男女間賃金差異等の公表義務対象の拡大(常時雇用従業員数101人以上の企業に影響


10 minute read | July.01.2026

English: Japan Employment Law Alert: Expansion of the Scope of Mandatory Disclosure of Gender Pay Gap and Other Information (Affecting Companies with 101 or More Regularly Employed Workers)

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)は、常時雇用する従業員1(以下「従業員」といいます。)が101人以上の企業に対し、女性の活躍に関する情報として定められた14項目(全労働者における女性労働者の割合、男女の平均継続勤務年数の差異等)から選択した1つの項目の公表を義務付けていますが、同法の改正(以下「本改正」といいます。)によって、2026年4月から、次のように公表項目が追加されました2

  • 【従業員数101~300人の企業】従来の項目+男女間賃金差異+女性管理職比率
  • 【従業員数301人以上の企業】従来の項目(男女間賃金差異を含む。)+女性管理職比率

日本においては、男女間賃金差異が国際的にみると依然として大きく、その要因として管理職に占める女性の割合が低い水準にある現状があります。本改正は、そうした現状を改善するために、元々2025年3月31日までの時限立法であった女性活躍推進法の有効期限を10年間延長し、かつ、上記のとおり、公表義務の範囲を拡大するものです。このような本改正の経緯に鑑みると、厚労省は、今後、公表義務の履行の確保に注力するものと考えられます。

本稿では、本改正を受け、本改正後の男女活躍推進法に基づく男女間賃金差異等の公表義務(以下「公表義務」といいます。)について、その義務内容の概略(下記1)、および義務の実施状況(下記2)をお届けします。

1. 本改正後の公表義務の概略

以下、公表義務の (i) 項目、(ii) 時期および頻度、(iii) 媒体、および (iv) 罰則等について、その概略3をご説明します。

(1) 公表項目

従業員数が101人以上の企業は、毎事業年度における以下の①から③のすべての数値を公表する義務があります。

男女間賃金差異:(i) 全社員、(ii) 正規社員、(iii) 非正規社員(パート・契約社員等)それぞれにおける、男性の平均年間賃金4に対する女性の平均年間賃金の割合(%)

女性管理職比率:管理職(役員を除く、課長級5以上の役職)に占める女性の割合(%)

下記【表1(女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供)】および【表2(職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備)】ついて、従業員数101~300人の企業は表1または表2から少なくとも1項目(合計1項目)、301人以上の企業は、表1および表2から少なくとも1項目ずつ(合計2項目)を選択

【表1(女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供)】

【表2(職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備)】

  • 採用した労働者に占める女性労働者の割合
  • 男女別の採用における競争倍率
  • 労働者に占める女性労働者の割合
  • 係長級にある者に占める女性労働者の割合
  • 役員に占める女性の割合
  • 男女別の職種または雇用形態の転換実績
  • 男女別の再雇用または中途採用の実績

 

  • 男女の平均継続勤務年数の差異
  • 10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
  • 男女別の育児休業取得率
  • 労働者の一月当たりの平均残業時間
  • 雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間
  • 有給休暇取得率
  • 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

 

(2) 公表時期および頻度

上記(1)の公表項目のうち、①および②については、各事業年度の数値を、その次の事業年度が開始してから概ね3か月以内に公表する必要があります。

なお、本改正後において最初に必要となる公表(例えば、従業者数101~300人の企業における、男女間賃金差異の公表)については、2026年4月1日以降最初に終了する最初の事業年度について、上記のルールに基づき実施する必要があります。この最初の公表における期限についていくつか具体例を挙げますと、次のとおりとなります。

  • 【事業年度が3月31日に終了する企業】概ね2027年7月1日(2026年4月1日以降最初に終了する事業年度(2027年3月31日に終了)の次の事業年度が開始(2027年4月1日)してから概ね3か月後)
    【事業年度が12月31日に終了する企業】概ね2028年4月1日(2026年4月1日以降最初に終了する事業年度(2027年12月31日に終了)の次の事業年度が開始(2028年1月1日)してから概ね3か月後)

他方で、上記(1)の公表項目のうち、③については、概ね年1回以上更新し、原則として、古くとも公表時点の前々年度の数値が公表されているようにする必要があります。

(3)  公表媒体

公表する媒体は、厚労省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」(日本語のみ)。以下「厚労省データベース」といいます。)、または企業の自社ホームページ等となりますが、後者の場合には、女性の求職者等が容易に閲覧できる方法でないと判断されたときには、公表したものと扱われないため、実際には、公表はほぼ全て、厚労省データベースにおいてなされています。

なお、上場会社においては、有価証券報告書にて男女間賃金差異および女性管理職比率を記載することがありますが、同記載をもっては女性活躍推進法の公表義務を果たしたことにはならない点には注意が必要です。

(4) 罰則等

上記の公表義務に違反した場合には、厚生労働大臣(都道府県労働局長)から、違反の是正に向けて、助言、指導、勧告がなされることがあり、勧告に従わなかった場合、厚生労働大臣(都道府県労働局長)は企業名を公表することができます。現時点で、企業名の公表がなされた例はありません。

しかしながら、本改正の経緯に鑑みますと、厚労省は今後、公表義務の履行の確保に注力するものと考えられ、特に、従業員数101~300人の企業に対して、より活発に履行を求めてくることが予想されます。

2. 義務の履行状況

公表義務の履行状況は、下表のとおりです。

従業員数

101~300人

301人~

全企業数 (2025年9月30日時点。厚労省発表6。)

33,579社
【100%】

18,163社
【100%】

全企業数 (2025年9月30日時点。厚労省発表 。)

16,237社
【約48%】

(参考値 7)15,054社
【約83%】

本改正「後」の必要公表事項を厚労省データベースで既に公表している企業数(参考値 。2026年5月29日時点)8 as reference value; as of May 29, 2026)

4,742社
【約14%】

111,319社
【約62%】

 

上記表中の「公表している企業数」は、該当時点において該当項目について何らかの公表を行っている企業数であり、公表事項が不足していたり、更新を怠っている企業も一部含まれていますが、相当数の企業が公表義務を遵守しているといえます。改正前は、従業員数が301人以上の企業と、101人以上300人以下の企業の履行状況に違いがありますが、今後は、従業員数が101人以上300人以下の企業の履行状況が大幅に改善されることが予想されます。なお、女性活躍推進法は、本改正前から、従業員数が101人以上の企業に対して、公表義務に加えて、女性の職業生活における活躍の推進に向けた取組に関する計画(「一般事業主行動計画」と呼ばれています。)を策定し、社内周知し、公表し、都道府県の労働局に届け出る義務を課しています。そして、2025年9月末日時点で、従業員数101人以上の企業のうち、96.7%が一般事業主行動計画の届出を行っています 。9 


1 「常時雇用する従業員」とは、雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者を指し、次のような者は常時雇用する労働者に該当します。

期間の定めなく雇用されている者
過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者

2 従業員数100人以下の企業については、いずれの項目の公表も努力義務とされています。

3 詳細については、厚労省の女性活躍推進法特集ページ(日本語のみ) をご参照ください。

4 賃金、給料、手当、賞与その他の名称の如何を問わず、労働の対象として使用者が労働者に支払うすべてのものを指します。ただし、退職手当や通勤手当等は、個々の企業の判断により、「賃金」から除外することができます。

5 「課長級」とは、次のいずれかに該当する者をいいます。

事業所で通常「課長」と呼ばれている者であって、その組織が二係以上からなり、若しくは、 その構成員が 10 人以上(課長を含む。)のものの長 
同一事業所において、課長の他に、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容および責任の程度が「課長級」に相当する者(ただし、一番下の職階ではないこと。)

7 厚労省データベースにて、男女間賃金差異(上記1(1)①)を公表している企業数です。

8 厚労省データベースにて、男女間賃金差異および女性管理職比率(上記1(1)①および②)を公表している企業数です。

9 該当時点において何らかの計画を届け出ている企業の数であり、計画の実施期間が経過しているにもかかわらず計画の更新が行われていない等、必ずしも適切ではない計画を届け出ている企業も一部含んでいます。