Japan Renewables Alert 61


December.05.2022

English: Japan Renewables Alert 61

Today’s Topic

12月8日締切:洋上風力第2ラウンドの公募占用指針案パブコメに

2022年11月8日、一般海域における洋上風力のいわゆる第2ラウンドの公募占用指針の案(以下「公募占用指針案」)が意見募集(パブリックコメント)手続に付されました(こちらを参照)。意見は、日本語であれば誰でもウェブサイトの意見提出フォーム又は電子メールへの添付により提出することができ、受付締切日時は12月8日23時59分です。

第2ラウンド(八峰町・能代市沖、西海市江島沖、男鹿市・潟上市・秋田市沖及び村上市・胎内市沖)の公募占用指針案は、2020年に受付が開始された第1ラウンドの公募の結果を踏まえて改めて行われた議論を反映した内容となっており、第1ラウンドの公募占用指針から多くの点が変更されています。第2ラウンドの公募は、本年12月中にも開始されることが見込まれており、日本における今後の洋上風力の動向を把握する上でも、上記公募占用指針案の分析・検討は不可欠です。

1. 洋上風力の公募

一般海域における洋上風力事業は、2019年4月1日に施行された海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(平成30年法律第89号)に基づき、国が指定した促進区域において、公募により事業者を選定することとされています。各海域における公募では、そのルールを定める公募占用指針が公表され、これに従って公募が行われます。

2019年12月に促進区域に指定された①五島市沖(長崎県)では、2020年6月から12月まで浮体式(17MW)についての公募が行われ、2021年6月に事業者が選定されました(こちらを参照)。その後、②能代市・三種町・男鹿市沖(秋田県。着床式、479MW)、③由利本荘市沖(秋田県。着床式、南北合わせて819MW)、④銚子市沖(千葉県。着床式、391MW)の各海域が、2020年7月に促進区域に指定され、2020年11月から2021年5月まで行われた公募により、2021年12月、3海域全てにおいて、三菱商事を中心とするコンソーシアムが、市場の予測を大きく下回る価格で選定を受け、大きな衝撃をもって受け止められました(こちらを参照)。

⑤八峰町・能代市沖(秋田県。着床式、356MW)は、2021年9月に促進区域に指定され、2021年12月から公募が行われていましたが、2022年3月、第1ラウンドの公募の結果から洋上風力の価格競争性が明らかになったなどとして、早期稼働を促す内容とするべく、公募占用指針の見直しが行われることとなりました(こちらを参照)。2022年9月には、新たに、⑥西海市江島沖(長崎県。着床式、424MW)、⑦男鹿市・潟上市・秋田市沖(秋田県。着床式、336MW)、⑧村上市・胎内市沖(新潟県。着床式、1,050MW)の3区域が促進区域に指定されており、⑤から⑧の4区域が第2ラウンドの対象区域となる予定です。

2. 審議会における議論とこれを踏まえた公募占用指針案

国の審議会(洋上風力促進ワーキンググループ・洋上風力促進小委員会の合同会議)では、公募参加者の提出する「公募占用計画」の評価方法等についての議論が行われ、各海域の公募占用指針において定めるべき事項などについての一般的な方針を示す「一般海域における占用公募制度の運用指針」(こちらを参照。2022年10月改訂)の改訂案についてのパブリックコメントの内容も踏まえて議論が重ねられました。今回のパブリックコメント手続の対象となる公募占用指針案は、こうした議論を踏まえた内容となっています。

公募占用計画の評価は、各事業者が示す供給価格についての「価格評価点」(120点満点)と、事業の実現性に関する「事業実現性評価点」(120点満点)との合計で行われます。第1ラウンドの公募占用指針における評価基準では、価格評価点については、最も低い供給価格を提示した事業者が120点満点の評価を受ける一方、絶対評価を基本とする事業実現性評価点については、120点満点を獲得することは難しいと指摘されていました。そこで、第2ラウンドの公募占用指針案では、事業実現性評価において最高の評価を得た事業者には120点満点が付与されるように補正(事業者の評価点÷最高評価を受けた事業者の評価点×120)をすることとされています(公募占用指針案49頁参照)。

事業実現性評価は、(1)事業の実施能力(80点)として、(1.1)事業計画の迅速性(20点)、(1.2)事業計画の基盤面(20点)、(1.3)事業計画の実行面(20点)、(1.4)電力安定供給(20点)の4つの項目から、(2)地域との調整、地域経済等への波及効果(40点)として、(2.1)関係行政機関の長等との調整能力(10点)、(2.2)周辺航路、漁業等との協調・共生(10点)、(2.3)地域への経済波及(10点)、(2.4)国内への経済波及(10点)の4つの項目から構成されています。このうち、(1.1)迅速性の項目は、第2ラウンドから盛り込まれた項目であり、早期運転開始の促進と拙速な計画の防止の観点から、運転開始時期に応じて得られる基礎評価点(たとえば、⑤八峰町・能代市沖であれば、2027年6月30日までの運転開始で最高の20点)に、(1.2)事業計画の基盤面及び(1.3)実行面の評価点比率(これら2項目の評価点の合計÷40)を乗じて得た数値を評価点とすることとされています(49頁以下参照)。また、事業実現性評価全体を通じて、基準が抽象的で事業者間での差が出にくいとの指摘もあった評価基準を具体化し、事業実現性評価における事業者間の差異がより強く評価に反映されるよう定められています(50頁以下参照)。このほか、(2)地域との調整、地域経済等への波及効果についての項目では、評価に当たり知事の意見を聴取することが明示されました(48、49頁参照)。

また、第1ラウンドではFIT制度が適用されていましたが、第2ラウンドではFIP制度が適用されます。FIP価格は公募占用計画記載の金額によりますが、その上限額は、モノパイル式が想定される⑤八峰町・能代市沖、⑦男鹿市・潟上市・秋田市沖、⑧村上市・胎内市沖の各促進区域では19円/kWh、ジャケット式が想定される⑥西海市江島沖では29円/kWhとされています。最低価格又は3円/kWh以下の価格で、価格評価点は最高評価120点となります。

さらに、価格評価と事業実現性評価の結果、合計1GWを超える複数区域において同一の公募参加者が1位となった場合には、次点者との点数差が大きい促進区域から順に1GWに達するまでの範囲で選定事業者となり、他の促進区域における公募占用計画は無効として扱われ、次点者が繰り上がることとされています(122頁以下参照)。このほか、⑤八峰町・能代市沖と⑦男鹿市・潟上市・秋田市沖とでは、いずれも秋田港又は能代港を基地港湾として用いることが考えられ、各促進区域の選定事業者間で利用が重複してしまう可能性があり、このように価格評価と事業実現性評価の結果に基づき各促進区域で1位となった公募参加者を選定した際に基地港湾の利用重複が生じてしまう場合における選定事業者の決定方法も定められています(122頁以下参照)。

3. 今後の展望

政府では、本年末までに第2ラウンドの公募開始を予定であるとしており、また、公募期間は開始後6か月程度が見込まれます。政府は、2030年までに再エネ比率を36~38%以上とすることを目標とするとともに、同年までに洋上風力5.7GWの導入を図ることを目指しています。現在、事業者やJWPA等の業界団体において、鋭意、提出意見の作成が行われています。日本の洋上風力は未だ黎明期にあり、制度の発展途上にあることから、関連プレイヤーとしては、今後も関連する制度動向に留意するとともに、適切な対応や働きかけを続けていくことが求められます。