Japan Renewable Alert 40: 洋上風力発電のための海域利用新法の概要と課題

Energy & Infrastructure Alert | March.27.2019

English: New Offshore Use Act for Offshore Wind Projects: Outline and Issues

2018年11月30日、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に関し、関係者との調整の仕組みを定めつつ、海域の長期にわたる占用が可能となるよう、所要の措置を講ずるための「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」(以下「本法律」)が成立し、今月、本法律の施行期日を2019年4月1日とすることが決定されました。今後、本法律によって、促進区域における洋上風力発電の普及が促進されることが期待されます。

本レターでは、本法律の概要及び本法律が想定する制度(以下「本制度」)の課題について記載いたします。

I. 本法律の概要 --- 占用までの手続きの流れ

本法律は、洋上風力発電の円滑な導入のため、一般海域の長期占用を実現するための統一的ルールとして、経済産業大臣及び国土交通大臣が促進区域を指定し、価格等を評価要素とする公募によって促進区域内の海域を最大30年間占用することが出来る事業者を選定する制度を定めるものです。占用までの実際の手続きの流れは下記となります。

  1. 内閣総理大臣は、海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用を促進するための基本方針の案を作成し、政府が閣議決定により定めます。
  2. 経済産業大臣及び国土交通大臣が、農林水産大臣、環境大臣等との協議や、関係者を構成員とする協議会等の意見を聴取した上で、促進区域を指定し、公募占用指針を策定します。
  3. 事業者は、経済産業大臣及び国土交通大臣に公募占用計画を提出します。
  4. 経済産業大臣及び国土交通大臣は、発電事業の内容、供給価格等により最も適切な公募占用計画の提出者を選定し、当該公募占用計画を認定します。
  5. 事業者は、認定された公募占用計画の内容に基づきFIT認定を申請し、経済産業大臣は電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下「特措法」)に基づき認定をします。
  6. 事業者は、認定された公募占用計画に基づき占用の許可を申請し、国土交通大臣は30年を超えない範囲内において占用を許可します。

促進区域については、まず国が専門家で構成される第三者委員会の意見を踏まえて有望区域を選定した後、国が漁業関係者らを交えた協議会での検討と並行して詳細調査を行い、改めて第三者委員会を開いた上で指定される予定です。全国に少なくとも5か所設けられる想定で、強い風が吹き風力の適地とされる青森県、秋田県、佐賀県、長崎県の沖合が有力視されております。

II. 本制度の課題

大きな期待が寄せられる本制度ですが、一方で、種々の課題もあります。以下は、その中でも重要と思われるものになります。

1. 系統の確保が事業者責任で、かつ、系統権利の「承継」があり得ること

本制度は、「促進区域に指定しようとしている区域において、事業者等が想定される風力発電事業の規模につき十分な系統容量を既に確保しており、事業者等が、当該系統を促進区域の指定後の占用権の公募のために活用することを希望していること」を前提としております。すなわち、系統の確保については事業者サイドに委ねられております。

さらに、本制度は、「他の事業者等が占用権の公募で選定された場合、事業者等は、自らが確保している系統に係る契約を、当該選定事業者等に承継することを承諾していること」も前提としております。つまり、電源募集プロセス等を通じて予め自らの洋上風力発電事業に関して系統を確保した事業者がいた場合で、当該事業の区域が促進区域に指定され本制度の対象となった場合、当該事業者が占用権の公募で選定される保証がないことから、結果的に、系統を確保した事業者と占用権の公募で選定された事業者が相違してしまうことがあり得ることになります。かかる場合、本制度は、系統を確保した事業者が、当該系統の権利を、公募の選定事業者に承継することとしているのです。その承継方法については、「(系統を確保した事業者や、系統の承継を受ける事業者が)不当に利益を得、又は不当な不利益を被らないよう、その承継が客観的に計算された価格に基づいてなされることを担保する」という方策例が示されているものの、その詳細については明らかにされておりません。そのような公平な承継方法が可能であるのか、いかに設定されるのかが大きな懸念点となります。特に、現状、系統連系の関係で発電場所の確保は原則事業者の責任で行うものとされていることから、一般海域での洋上風力発電事業においては、複数の発電事業実施場所の全部又は一部が重複している事業が多数あると言われております。かかる重複があった場合、公募の選定事業者への承継をどう実施するのか、その場合に公平な取扱が可能であるかなどが今後の課題となると考えられます。

2. 先行案件の取り扱い

本制度で促進区域として指定されることが有力視されている区域では、既に事業化に向けた動きが相当程度に進展している洋上風力発電案件が多数あります。これらの案件の中には、既に雇用を進め、地元への説明等も重ねている案件もあることから、本制度の実施にあたっては、そういった先行案件のある区域について配慮を求める声が、事業者のみならず、都道府県レベルからも多く挙がっておりました。これに対して、本制度では、先行的に地元との調整を行っている事業者については、事業者が提出する公募占用計画の評価において、関係行政機関の長との調整に関する事項の点で評価するとの方針が示されるに留まりました。

他方で、促進区域を指定するにあたっては、種々の既知情報の収集が必須であるとの視点から、「公平性、公正性、透明性を確保した上で、都道府県や事業者等が保有する情報を提供してもらうなど、既存の情報を可能な限り活用することで、効率的な情報収集に努めることが望ましい」という方針も出されております。莫大な開発費を投じて事業を進めてきた先行案件の保護の必要性と、他事業者との競争性確保並びに公平性、公正性及び透明性の確保は非常に難しい課題となると考えられます。

3. 調達価格の入札制への移行

政府は、本制度の適用対象となる洋上風力案件については、調達価格を入札制に移行させるとしております。さらに、本法律の適用開始時期によっては、洋上風力発電の一部について、既に調達価格を設定している年度においても、入札制に移行することがありうる旨も明らかにしております。すなわち、特措法に基づいて、2017年度において、20kW以上の着床式洋上風力案件については、2017年度、2018年度及び2019年度の価格として36円/kWh(税別)が既に定められていたにも拘わらず、「(海域の利用の促進に関する)ルール整備という当初想定していなかった変化が生じ、よりコスト効率的に導入が可能となる条件が整い、既に設定した価格が置いていた想定が大きく変わる可能性がある」という何ら特措法が想定していない理由を根拠に、既に設定した調達価格を反故に出来るとしたのです。これに対しては、特措法に反するとの批判の声が国内外から挙がっており、我が国の法制度の安定性に疑問が呈される結果となっております。

昨今の我が国における再生可能エネルギーを取り巻く法令や運用の度重なる変更と併せ、いかに安定性・持続性を確保した制度となしうるか、大きな課題が残ります。

以上のほかにも、本法律・本制度については、種々の課題があります。本制度の運用その他政府の洋上風力発電に対する政策及び方針については、引き続き十分な注意が必要です。