Japan Renewable Alert 36: 32円~40円案件・適用調達価格引き下げの危機

Energy & Infrastructure Alert
October.23.2018

English:32-40 yen Projects: Risk of Lower Applicable Procurement Prices 

2018年10月22日、経済産業省から再エネ特措法施行規則の一部を改正する省令案等に関するパブリックコメントの募集が始まりました。これは、2018年10月15日に開催された経済産業省の再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会において示された、32円~40円の調達価格を確保している未稼働の太陽光案件のうち、所謂3年ルール(2016年8月4日のEnergy & Infrastructure Alertをご参照ください。)の適用がない案件について、大幅な適用調達価格の引き下げを行う方針に関してのものになります。

具体的には、新たなルールにおいて「送配電事業者が、事業者から『送配電事業者への系統連系工事の着工申込み』を受領した日」(以下「連系工事着工申込日」)という新たな基準を導入し、運転を開始していない10kW以上の太陽光発電設備のうち、2015年3月31日以前に旧認定を受け、2016年7月31日以前に接続契約が締結された全ての事業について、送配電事業者への系統連系工事の着工申込みを行うことを必須としています。そして、2019年3月末日までにこの連系工事着工申込日を迎えられなかった2012~2014年度認定の案件(32円~40円案件)については、当該案件が実際に連系工事着工申込日を迎えた日の2年前の年度の調達価格が適用されることになります。(なお、対象案件については、今回の意見公募要領における概要(以下「パブコメ概要」)では2012~2014年度認定の案件のみの予定となっておりますが、上記小委員会では毎年対象案件を増やしていく案も出されております。)

したがって、例えば、該当案件が2019年4月に連系工事着工申込日を迎えた場合は、2017年度の調達価格(但し、入札対象外規模の調達価格。以下同じ。)である21円が適用となり、該当案件が2020年4月に連系工事着工申込日を迎えた場合は、2018年度の調達価格である18円が適用となります。
経済産業省担当者の非公式な話によりますと、ファイナンス組成済みの案件や建設工事着工済みの案件であっても、例外なく、この新しいルールを適用するとのことです。

そうなりますと、この「連系工事着工申込日」が具体的にいかなる日であるかが極めて重要になります。パブコメ概要及び同委員会では、「事業者側の準備は全て整っていて、あとは送配電事業者に発電設備を系統に接続してもらい通電するだけ」という状態、すなわち、「送配電事業者が系統側の事由のみに基づいて最短の連系開始予定日を機械的に決定できる状態」であることを前提として、この連系開始予定日の決定に至るための実務上の手続として今後事業者に「連系工事着工の申込」を行わせることとし、これを送配電事業者が不備なく受領した日をもって、「連系工事着工申込日」とする、としております(同委員会の資料では下記の整理をしております。)

出典:第9回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー 

(出典:第9回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会資料2)

では、いかなる条件が揃っていればこの連系工事着工申込みが出来るのでしょうか。この点、パブコメ概要では、「具体的な手続や実務上の要件の詳細は別途お知らせする」とした上で、最低限の要件として下記を掲げております。
(i) 土地の使用の権原が現に得られている(地権者等との調整が全て整っている)こと
(ii) 林地開発、農地転用等の事業の開発・実施に必要となる許認可が現に得られていること
(iii) 条例による環境アセスメントが必要な場合は、当該プロセスが終了していること
(iv) それ以降、認定計画に変更が生じないこと

なお、新ルール施行日前に連系工事着工申込みが受領されるようにするため(すなわち2019年3月末日までに連系工事着工申込日を迎えられるようにするため)の送配電事業者への連系工事着工申込みの提出期限は、2019年1月下旬ころになる見通しだそうです。

さらに、連系工事着工申込日を迎えた案件について、その日(又は2019年3月31日のいずれか遅い方)から1年間の運転開始期限も設けられる方針です。
したがって、該当案件が2019年3月末までに連系工事着工申込日を迎えた場合は、2020年3月末までの運転開始期限が付され、該当案件が2019年4月以降に連系工事着工申込日を迎えた場合は、その日から1年間の運転開始期限が付されることになります。但し、運転開始期限を超過した場合の取扱いについては、所謂3年ルールと同じになるか否かはまだ決定しておりません。

以上をまとめますと、下記の取り扱いになります。

出典:第9回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー

(出典:第9回 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会資料2)

この新ルールは、個別の事情を一切考慮することなく、一定範囲の太陽光案件につき一律に不利益な取り扱いをするものであります。既に種々の行動に移されている事業者様も多くいらっしゃいますが、少なくとも、パブリックコメントを通じて現場の声を国に届け、実態に即した適切な配慮を求めていくべきと考えます。パブリックコメントの受付は2018年11月21日までです。適切な意見の提出が求められます。