『グリーン・ラッシュ』の到来

Energy Alert | March.17.2012

English: Green Rush Hits Japan

<はじめに>

           7月から施行されるフィード・イン・タリフ及び2014年まで適用されるグリーン投資減税等により、日本の再生可能エネルギーマーケットは、特に今後2~3年の間、国内外から熱い注目を集め、ゴールド・ラッシュならぬグリーン・ラッシュが巻き起こる可能性が高いと考えられます。かかるグリーン・ラッシュを引き起こすそれぞれの制度はいかなるものなのか、キー・ポイントはどこか --- 本稿では、来るべきグリーン・ラッシュを念頭に、それぞれの制度についての最新情報を交えて概説します。

1.           FIT法

(1)         日本のFIT制度は本当に魅力的か?

           2011年8月の国会で「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(平成二十三年八月三十日法律第百八号)、所謂フィード・イン・タリフ(Feed-in-Tariff)法(以下「FIT法」)が成立し、本年7月から施行されることになりました。

           肝心の買取価格(調達価格)及び買取期間(調達期間)については、未だ告示されておりませんが、経済産業省が従前公表した再生可能エネルギーの固定価格買取制度(以下「FIT制度」)開始時点における想定買取価格及び買取期間[1]は、太陽光発電以外の対象発電(風力、中小水力、地熱、バイオマス等)について、買取期間が15 - 20年の範囲内、買取価格が15 - 20円/kWhの範囲内となっております。

              太陽光については、買取期間が15 - 20年の範囲内[2]となっておりますが、買取価格については、「当初は高い買取価格を設定。太陽光発電システムの価格低下に応じて、徐々に低減させる」としか公表がされておりません。但し、太陽光については、現行制度上、太陽光発電の余剰電力買取制度(以下「余剰買取制度」)[3]が存在します。余剰買取制度における2011年度の買取価格は40円/kWh[4]となっており、1月25日に経済産業省が発表した2012年度の買取価格案[5]も、これを延長適用する内容となっております。同制度は、7月からFIT制度に移行されるものの、余剰買取制度において既に買い取られている太陽光発電設備については、同じ条件で買い取りが継続されるとなっております上、後述のとおり、FIT法は、施行から3年間は特に発電事業者に有利な買取価格とする旨規定しておりますことから、FIT制度開始時点における買取価格は、余剰買取制度における現在の買取価格に近い価格になるのではないかといわれております。

            買取価格が上記の想定にある場合、FIT制度による再生可能エネルギー発電のサポートが一般的なヨーロッパ諸国と比較しても、発電事業者及びプロジェクトにとって非常に有利な価格になります。

            ヨーロッパでは、EU加盟国27か国のうち20か国がFIT制度を導入しておりますが[6]、価格は国によって幅があり、風力発電で概ね€0.1 / kWh (現在の為替レートで約10円 / kWh)程度の国が多く、太陽光発電(PV)で概ね€0.3 / kWh (現在の為替レートで約30円 / kWh)程度の国が多い状況です。PVについて、2007年に一際高額な買取価格のFIT制度を導入し、当時「リニューアブル・バブル」とまで言われたスペインにおける買取価格でも、概ね€0.24 – 0.47 / kWh[7] (現在の為替レートで約24円 – 47円 / kWh)でしたし、2010年にFIT制度を補完的に導入し、5MW以下のPVに特に有利な価格を設定している英国においても、£0.30 / kWh[8] (現在の為替レートで約37円 / kWh)という価格設定になっております。こういった比較からしましても、現在日本で想定されている買取価格は、世界的にも高いレベルになる可能性が高いと言えます。

            また、買取期間については、特にプロジェクトの建設費をプロジェクト・ファイナンスの手法で調達する場合、より長期であることが望ましいといえます。上記で想定されている最短期間は15年ですが、欧米での再生可能エネルギープロジェクトへのファイナンスにおいて、ファイナンス期間の主流が15年前後あることからしますと、これに呼応する期間になりますので、プロジェクト・ファイナンスの組成も十分期待できる期間であるといえます。

            したがって、肝心の買取価格及び買取期間について未定である現段階においても、経済産業省が公表している想定を前提とする限り、日本が導入しようとしているFIT制度は、発電事業者及びプロジェクトにとって有利であるといえ、日本の再生可能エネルギーマーケットが非常に魅力的なものになる可能性が高いと考えられます。

            では、FIT法とは実際にどのような制度になるのでしょうか。以下、主要な点を概説いたします。

(2)        買取対象電気  

            FIT法における買取対象となる電気は、太陽光、風力、水力(30MW未満の中小水力)、地熱、バイオマスその他政令で別途定めるものを用いて発電された電気になります。

            発電事業者(電気供給者)は、自らの再生可能エネルギー発電設備が、調達期間にわたって安定的かつ効率的に再生可能エネルギー電気を発電することが可能であると見込まれるものであることや、発電の方法が省令で定める基準に適合することなどの点について、省令に従って経済産業大臣の認定を受ける必要があります。

            なお、現状、買取対象については、FIT法施行以降に運転を開始した新規事業を念頭に置いておりますが、既存事業への適用も依然議論されております。

(3)        買取義務

            電気事業者は、FIT法に基づく認定を受けた発電設備を用いて再生可能エネルギー電気を供給しようとする発電事業者(特定供給者)から、再生可能エネルギー発電設備を用いて発電した電気供給の契約(特定契約)を申し込まれた場合は、省令で定める正当な理由がない限り、これを拒むことができず、当該電気を調達価格で買い取る義務を負います。

            興味深いのは、法律が、電気供給契約の締結手順について、「特定供給者(発電事業者)から電気事業者に対して、申し込み」をし、電気事業者は、「その内容が当該電気事業者の利益を不当に害するおそれがあるときその他の経済産業省令で定める正当な理由がある場合を除き」締結をしなくてはならない、という立て付けになっており、契約内容の主導権があくまでも発電事業者サイドにある規定になっている点です。この点、経済産業省資源エネルギー庁の見解としては、いかなる理由を「正当な理由」とするかの詳細は依然検討中であるものの、基本的には、電気事業者に対して極端に高額な損害賠償義務を求めるといった電気事業者にとって一方的に不利な内容であったり、あるいは、発電事業者が、発電施設への必要な立ち入りや検査等を拒めるといった、適正な発電事業遂行上問題があると思われるような内容であったりといった極めて制限的な内容の規定に留める意向であること、そして、かかる極めて制限的な正当理由に該当する場合を除き、電気事業者サイドには、電気供給契約に応じる義務があると考えるとのことでした。詳細は今後決定されますが、いずれにしましても、電気供給契約作成上、発電事業者サイドに大幅な裁量がある可能性が高く、いかなる契約を作成して電気事業者に持ち込むかが大きな鍵となります。

       なお、FIT法上、電気事業者サイドに買取義務がありますが、発電事業者サイドに発電(供給)義務はありません。したがって、発電事業者が、当初想定していた電気供給ができない場合であっても、電気供給契約で別途定めがない限り、発電事業者サイドにペナルティが発生するようなことはありません。

(4)        買取価格

            買取価格(調達価格)については、経済産業大臣が、原則として、毎年度、当該年度の開始前に、再生可能エネルギー発電設備の区分、設置の形態及び規模ごとに定めることとなっています。なお、かかる決定は、経済産業大臣が、関係大臣(農水大臣、国交大臣、環境大臣および消費者担当大臣)に協議の上、国会の同意を得た上で任命される委員によって構成される中立的な第三者委員会(調達価格等算定委員会)の意見に基づいて告示するとされています。   

       調達価格を決定するにあたっては、当該再生可能エネルギーの発電設備を用いて、調達期間にわたり安定的に電気を供給する場合に通常必要となる発電コスト、再生可能エネルギー電気の供給者が受けるべき適正な利潤等を勘案して定めるものとされています。

            なお、FIT法上、「経済産業大臣は、集中的に再生可能エネルギー電気の利用の拡大を図るため、この法律の施行の日から起算して三年間を限り、調達価格を定めるに当たり、特定供給者が受けるべき利潤に特に配慮するものとする。」と規定されており、集中的な再生可能エネルギーの利用の拡大を図るため、法の施行から3年間は、標準的な発電コストに、発電事業者が受けるべき利潤分を多く上乗せした特に有利な調達価格となることが期待されます。これに関係して、経済産業省が公表している多様なエネルギーによる発電コストの比較例がありますが、それによりますと、太陽光による発電コストは38円/kWh乃至45円/kWh程度となっております。したがって、太陽光の買取価格が38円/kWh未満となることは考え難く、やはり余剰買取制度における2011年度の買取価格である40円/kWhに近い価格になるのではないかと推察します。

            一旦電気供給契約が締結された場合、契約上、別途合意がない限り、当該契約で合意された調達価格が、調達期間を超えない期間内での契約期間中、維持されることになります。したがって、将来の価格見直し等によって、調達価格が低減されることがありましても、一旦電気供給契約で合意された調達価格が(別途合意がない限り)低減されることはありません[9]

            FIT法上、施行から3年間、特に有利な調達価格となることが期待されていることからしますと、施行から3年の間に、電気供給契約を締結することが望ましく、まさにこの最初の3年の間に有利な調達価格にて電気供給契約を締結できるかどうかが開発の鍵になるといえます。

            なお、電気事業者が買取に要した費用については、電気利用者から、電気料金に加え、サーチャージ(賦課金)を回収することによって、賄うこととされています。

(5)        買取期間/FIT期間

            買取期間(調達期間)についても、経済産業大臣が、原則として、毎年度、当該年度の開始前に、再生可能エネルギー発電設備の区分、設置の形態及び規模ごとに定めることとなっています。なお、かかる決定についても、経済産業大臣が、関係大臣に協議の上、調達価格等算定委員会の意見に基づいて告示するとされています。     

       調達期間を決定するにあたっては、当該再生可能エネルギーの発電設備による供給開始から、設備の重要部分の更新が必要になるまでの標準的な期間を勘案して定めるものとされています。

            なお、FIT法上、政府は、国のエネルギー基本計画が変更されるごと、又は少なくとも3年ごとに、再生可能エネルギー電気の供給量の状況及びその見通し、電気の供給に係る料金の額やその見通し、その家計や電気の使用者の経済活動等に与える影響、内外の社会経済情勢の変化等を踏まえ、FIT法の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるとされており、さらに、2021年3月までの間に、FIT法廃止を含めた、FIT法の抜本的な見直しをすることとなっています。

(6)        外資参入規制等

FIT法上、国外の法人等が国内の再生可能エネルギー発電事業に投資等を行うことを規制する内容はありません。但し、投資等の態様により、外国為替及び外国貿易法上の事前届出等の手続きが必要となる場合があります。例えば、非居住者である外国投資家が、国内に、再生可能エネルギー発電事業を行う子会社を設立する場合や、国内法人に対して一定の貸付けを行う場合は、電気業が事前届出業種に該当しますので、対内直接投資の30日[10]前事前届出が必要になる可能性が高くなる上、かかる事前届出を行った外国投資家が、実際に国内子会社の株式等を取得したり、金銭の貸付けを行ったりした場合は、直投命令に従った実行報告を行う必要があります。

   

2.         グリーン投資減税等の租税優遇措置[11]

(1)        グリーン投資減税

            2011年6月、「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律」が公布・施行され、これにより、再生可能エネルギー設備等への投資、いわゆるグリーン投資を重点的に支援する環境関連投資促進税制(以下「グリーン投資減税」)が創設されました。

            これは、青色申告書を提出する法人又は個人の事業者が、2011年6月30日から2014年3月31日までの適用期間内に、対象設備を取得し、かつ1年以内に事業の用に供した場合に、取得金額の30%特別償却又は7%税額控除のいずれかを選択し、税制優遇措置を受けることができるという制度です。

            対象設備の「新エネルギー利用設備等」には、太陽光発電設備、風力発電設備、水熱利用設備、雪氷熱利用設備及びバイオマス利用装置の5設備が入っております。

         取得金額の30%特別償却については、適用期間内に対象設備を取得して、その日から1年以内に事業の用に供した場合、事業の用に供した日を含む事業年度において、普通償却に加えて、取得額の30%相当額を限度として特別償却できるというものです。取得価額には、設備等の購入代金(購入手数料を含む)又は製作費(原材料費、設備費、製作に従事した従業員の賃金等を含む)に加えて、企業の経理において取得価額に算入した借入金の利子(減価償却資産の購入または建設、製作、製造等の借入資金の利子で、当該資産の使用開始前の期間に係わるもの)も含まれます。

            他方の7%税額控除については、「中小企業者等」のみに適用される制度で、基準取得価額の7%相当額の税額控除を受けられるというものです。ただし、その税額控除額がその事業年度の法人税額の20%相当額を超える場合には、その20%相当額が限度となります。「中小企業等」とは、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下の法人、又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人になりますが、大企業の子会社等[12]は除くとされておりますため、7%税額控除を受けられるか否かの判断にあたっては、ストラクチャーを含め、詳細な検討が必要になります。

            このグリーン投資減税は、補助金[13]を受けた場合でも利用可能であり、かつ、法人事業税や固定資産税等の地方税に対する優遇措置とも併用することが可能になります。

(2)        太陽光発電設備に係る課税標準の特例措置(固定資産税)

            事業者が、政府の補助を受けて取得された太陽光発電設備について、固定資産税が課せられることとなった年度から3年分の固定資産税に限り、課税標準を、課税標準となるべき価格の3分の2に軽減することができる旨の租税優遇措置があります。

            なお、現状、対象となるのは太陽光発電設備のみですが、2012年2月現在、国会に提出されている法案では、対象を他の再生可能エネルギーに拡大する内容となっています。

 

<おわりに>

            買取期間及び買取価格が正式決定していないFIT法ですが、それでもなお、発電事業者及びプロジェクトにとって有利であるといえ、グリーン投資減税等と併せると、特に今後2~3年の間、日本の再生可能エネルギーマーケットは、国内外の投資家等にとって非常に魅力的なものになる可能性が高いといえます。来るべきグリーン・ラッシュには、関係制度のキー・ポイント掌握が必須です。

 


 

[1] http://www.meti.go.jp/press/20110311003/20110311003-3.pdf

[2] 住宅用以外の事業所用、発電事業用等のものについての期間。住宅用については10年が想定されています。

[3] 住宅などに設置された太陽光発電設備で発電した電気のうち、自家消費分を除いて余った電気を一定の価格で10年間、電力会社が買い取る制度で、2009年11月から実施されています。

[4] 非住宅用及び10kW以上の住宅用の場合で、2011年度に新たに導入されたこと及び国から新エネルギー等導入加速化支援対策費補助金を受給していないことが国の設備認定(RPS認定)により確認された場合の価格です。10kW未満の住宅用の場合は42円/kWhです。太陽光発電の設置に加えて、太陽光発電以外の発電設備等を併設しているダブル発電の場合は、非住宅用及び10kW以上の住宅用の場合で32円/kWh、10kW未満の住宅用の場合で34円/kWhになります。なお、余剰買取制度では、発電事業目的の発電や500kW以上の場合は、対象外となっております。

[5] 4月1日から7月1日までの3か月間についての買取価格になります。

[6] 2010年現在

[7] 2008年9月29日以前に登録されたPVについての価格。なお、スペインは、その後抑制的になり、2012年1月には、新規プロジェクトへのFIT適用を保留する旨発表しています。

[8] 2011年現在。Stand-aloneのPVについての価格。

[9] 但し、現状、買取価格は消費税込の価格となる可能性が高いと言われており、消費税が増額された場合には、実質的に「固定価格」でなくなる可能性があることに留意が必要です。

[10] 但し30日間の不作為期間については短縮される場合があります。

[11] 本稿のグリーン投資減税等の税金についての記載は、資源エネルギー庁等が公表している内容を基に記載しております。当事務所では、日本の税法についてのアドヴァイスを行っておりませんので、グリーン投資減税等の租税優遇措置適用等に関する詳細なお問い合わせについては、別途タックスカウンセル等をご紹介させていただく場合がありますことをご了承ください。

[12] その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上が同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円を超える法人又は資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人をいい、中小企業投資育成株式会社を除く。)の所有に属している法人や、その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上が大規模法人の所有に属している法人。

[13] 但し、経済産業省の説明によりますと、事業仕分の結果、国の再生可能エネルギー促進策はFIT制度に収斂させるという方針であることから、今後、FIT制度の対象となっている再生可能エネルギーのプロジェクトへの補助金はなくなってゆき、各自治体レベルでの補助等、制限的になってゆくのではないかとのことでした。現在、FIT制度の対象となっている再生可能エネルギーの関係では、経済産業省が定めた住宅用太陽光発電導入支援対策基金造成事業費補助金交付要綱に基づく補助事業者として、一般社団法人太陽光発電協会/太陽光発電普及拡大センター(J-PEC)が募集を行っている住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金制度がありますが、これも2013年で終了予定です。